海外大学院を目指す方へ:留学を志した理由と進学までの過程【船井情報科学振興財団第1回報告書】

私は船井情報科学振興財団の奨学生であり、授業料・生活費のサポートを頂いて海外大学院で学んでいる。

公益財団法人船井情報科学振興財団は若手研究者への褒賞事業及び留学を目指す優秀な学生への奨学事業によって、広く世界に貢献します。

今回は、財団のホームページで公開されている私の報告書を紹介する。

私たち奨学生は半年に1度、報告書の提出・公開を義務付けられている。

今回紹介する報告書は船井財団に初めて提出した2016年6月に公開されたものだ。

半年前以上前に作成したものなので、私の現在の目標・キャリア設計は当時から変わってしまっていることをご承知願いたい。

留学前のフレッシュで青臭い雰囲気をみなさんにお伝えしたいと思ったので、修正はほとんどせず、本記事にて再掲している。

海外大学院への留学を志している方のお役に立てれば幸いである。

かなり長い記事なので、読むのがかったるいという方は、後半の「大学院留学を目指す方へ」「海外大学院を目指す方にオススメの書籍・ウェブサイト」の項だけでも読んでいただけたら幸いである。

はじめに

2016年秋から、University of Michigan、Macromolecular Science and EngineeringのPh.D programに進学する小栗 直己(おぐり なおき)と申します。

修士課程までは群馬大学理工学府の有機元素化学研究室(海野・武田研)にて研究を行っていました。

今回は、船井情報科学振興財団の第1回報告書として、留学を志した理由と進学先決定に至るまでの経緯を記します。

ノーベル化学賞が私を化学の道へ導いた

大学受験を控えた2010年当時、私は迷っていた。

「人類の発展に貢献したい」という漠然とした想いは持っていたものの、大学で何を学びたいのかが曖昧なままだったのだ。

そんな時期、鈴木章さん、根岸英一さんがノーベル化学賞を受賞した。

受賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング反応の開発」。

鈴木、根岸、ヘックなどが開発に尽力したクロスカップリング反応を用いることで、現在では多くの医薬品や化学材料が簡便に合成できるようになっている。

この受賞が、迷っていた私を化学の道へと導いた。

恩師との出会いがキッカケで海外留学を志すようになる。

見事にセンター試験に失敗してしぶしぶ入学した地方大学にて、海外留学へのキッ カケをつかむことになる。

英語の講義の担当がアメリカで博士号を取得している米国帰りの先生だった。

それを知った私は、興味本位でアメリカの大学院について調べ、 アメリカの理系大学院生は生活費・学費をもらいながら学んでいることを知った。

先生も留学に関する質問に快く答えてくださり、それによって私は多くの情報を得た。

この出会いをキッカケに、私は海外留学を志すようになる。

なぜ海外留学なのか?

私の最終的な目標は、知識や技術を幅広い分野・産業へ応用できる人物になることだ。

電話を再発明したスティーブ・ジョブズや、電気自動車やロケット開発にイノベーションを起 こしたイーロン・マスクがその理想像に近いが、研究者寄りでありたいとも思っている。

培った知識・技術を積極的にビジネスに繋げ、出来る限り多くの人の元に届けることが私の心からの願望であった。

その点で、アメリカは日本より優れた環境であると考えた。

科学的発見が産業へ結びつく速度、ビジネスを立ち上げるための環境は、日本より明らかに優れている。

実際、現在繁栄 している企業、主にIT企業や宇宙ビジネスなどはアメリカで生まれている。

世界を主戦場として選ぶ場合、語学面などを考慮すると、 できるだけ早い段階でアメリカで学ぶべきだと感じた。

海外で専門的な仕事をするなら博士号はほぼ必須であること、日本で博士号取得を目指す経済的余裕がないことも、アメリカ大学院を目指す理由になった。

海外留学を選んだ理由は他にもたくさ んあるが、簡単にまとめると

  1. 博士学生に対する待遇が良い
  2. 海外を活躍の場にするための準備

ということになる。

出願準備

推薦状は、指導教官である海野先生、 フランス留学時代の指導教官、ミシガン大学の教授に頂いた。

3人はお互いに知り合いで、私自身の研究業績が良かったおかげか、 推薦状の執筆を快諾してくださった。

GPA(成績)に関しては、学部を早期卒業して大学院に入学していたこともあり、特に問題なかったように思える。

船井財団からの奨学金は大変心強かった。

アメリカの理系大学院生はほぼ全員が給料(授業料全額+生活費18~30万円ほど)をもらっており、そのお金は学部や指導教官が支払う仕組みになっている。

出願者が奨学金に採択されている場合、学部や教授が授業料・生活費を負担する必要がないため、選考の際に有利な立場に立てるケースが多い。

ミシガン大の教授にも「奨学金がなくても大丈夫だとは思うけど、奨学金があれば君の合格は間違いない」と言われていたので、奨学金の有無で合否が左右されるのは間違いないだろう。

TOEFL、GREの点数はかなり悪かった。

TOEFLにはかなり苦戦し、出願締め切り後にやっと90点が取れたので、そのスコアを提出した。

アメリカ大学院を目指している理系の方は、できるだけ早い段階でTOEFL100点をクリアすることを強くオススメする。

私がミシガンに合格したように、低い英語力を補うだけの強力な出願書類が他にあれば、トップスクールに合格することは十分可能である。

ただ、TOEFLで100点取れないようでは英語力など無いに等しいので、どちらにせよ渡米後に困る(マジで)。

TOEFLよりIELTSの方が向いていると思ったら、IELTSの対策をしてこちらのスコアを提出するのもアリだ。

※報告書執筆後にIELTSを受験してみました。やっぱりTOEFLより取り組みやすい印象です。

合否

私が出願したのは、ミシガン、MIT、 スタンフォード、UCバークレーの4校。

トップスクールのみに出願したので、あとでちょびっと後悔した…もうちょっとランクが低い大学院にも出願するべきだった。

情けないことにミシガンのみから合格通知が届く。

ミシガンは以前から第一志望だったのだが、その他3校に出願し ようと思い立ったのは、締め切り日直前になってからだった。

その3校の教授とはなかなかコンタクトが取れず、それが不合格の一因になったと予想している(TOEFL・GREのスコアが悪いことも原因だろう)。

ミシガン大学の合格は、恐ろしいほど早く決まった。

出願5日後に合格内定メー ルが送られてきたのだ。

合格通知は早くても1月になると予想していたため随分驚かされた。

2015年は安心して年の瀬を迎えることができた。

大学院留学を目指す方へ

「私は上位大学の学生ではないのですが、海外トップスクールに合格できるでしょうか?」

これは、私のSNSにしばしば寄せられる質問である。

率直に申し上げると、「あなたは圧倒的不利な立場にいるが、 不可能ではないですよ」というのが私の答えだ。

私自身も地方国立大出身の学生であり、 留学を志した頃から「地方大レベルの学生でもトップスクールに合格できるだろう か?」という思いを抱き続けてきた。

留学体験記などを見ていても、旧帝国大学や有名私立大出身の学生がほとんど。

受験競争を勝ち抜き、専門科目や英語が得意な彼らがマジョリティになるのは当然のことである。

経済的に裕福な学生が多いことも理由の一つだろうか?

海外大学院は給料が出るといっても、各試験や渡航費、準備など出費がかさむからだ。

※船井財団は支度金と渡航費を支給してくれるので、非常に助かった。

海外大学院受験において最も重要な 「有名教授からの強力な推薦状」も、国内上位校に在籍していれば、得る機会はいくらでもあるように思える。

あくまで相対的な話であるが、地方国立大には世界的に有名な教授はなかなかいないし、大学院留学について詳しい教授・学生もほとんどいない。

まずはこの差を認めねばならない(推薦状に関しては本当に深刻)。

しかしながら、私が留学を実現できたように、上位校の学生でなくてもやり様はある。

残念ながら、受験者全員が参考にできるような具体的な戦略は提供できないが、私なりのエールを以下に記す。

第一に、情報を十分に集め、効率的に留学準備をすることだ。

欲しい情報はインターネットや書籍でなんでも手に入る時代なので、有効活用しよう。

情報は命であり、事前調査なしに闇雲に動く のは時間の無駄だ。

まずは入試に対する戦略を立てて、長期的にかつ効率的に準備を進めよう。

第二に、覚悟を決めることだ。

生半可な覚悟では挑戦できない進路だということを認識しておいた方がいい。

高いGPAが出願の際に求められるため、日本の大学に入学した時点から出願前まで好成績をキープし続ける必要がある。

留学後もストレスフルな生活が待っている。

言うまでもないが、根を詰めすぎないことも大切なので、この経験を通じてワークライフバランスのセンスを磨いておこう。

第三に、夢やビジョンを具体的に思い描くことだ。

学位留学はハードであり、それを乗り越えるためにはエネ ルギーが必要だ。

そして、そのエネルギーはどこから湧いてくるのか?それはきっと、 夢やビジョン、そういったものなのだと思う。

※現在はそれだけではいけないと思っている。

一つ注意していただきたいのは、大学院に行くこと自体は自分の夢を叶えるための手段に過ぎず、夢そのものにはなりえないは ずだ。

最初のキッカケはなんでも良いと思うが、手段が目的にすり替わってしまうことだけは避けた方が良いと思っている。

「私には〇〇という夢があって、それを実現するために海外で学位を取るのだ」という思考が理想だ。

その夢が強烈であればあるほど高いモチベー ションが生まれ、その後の実績に繋がる可能性が高い。

その夢を追いかける過程で獲得したあなたの実績やバックグランドは、奨学金申請書や出願書類を鮮やかに彩ってくれるだろう。

審査員の心に、 「この人の将来性に掛けてみよう。この人が創る未来に私は住んでみたい」と魔法を掛けられるくらいの夢を描こう。

当然であるが、優れた研究実績を持つ学生は入試において大変有利である。

研究実績があれば即戦力の人材とみなされるため、 有名教授や志望校の教授が推薦状を書いてくれることもある。

海外大学院留学を目指す者はTOEFL・GREの勉強に時間を注ぎがちだが、日本で所属する研究室で結果を出すことこそが何より重要である。

以上をまとめると、大学院合格への一番の近道は、時間をかけて内省し、自分の中に確固たる夢・モチベーションを確立させ、それを支えに勉学・研究に励んで実績を残すことだ。

上位校の学生でないのなら尚更、この考えに立ち返るべきだ。

Tipsに頼りきりではいけない。

大学受験時代の小細工テクはそろそろ置いていこう。

Tipsで大学学部時代に高いGPAを叩き出しても、研究に向いているとは限らない。

絶えず自分自身の思考や価値観を見直し、環境に適応していこう。

海外大学院留学には、安易な攻略法など存在しない。

魅力的な研究者になろうと努力し続けること。

それが最も大切なことだと私は考えている。

最後に、決して諦めないこと。

きっと海外留学を諦めたくなる日が来る。

私自身も「もうやめようかな、日本はいい国だし、別に日本でも良いよな」 という考えが頭に浮かび、諦めそうになっ た時が何回もあった。

それでも、楽観的な姿勢を崩さず、視線だけでも目標に向けていれば、きっと道も拓けましょう。

さいごに

以上で報告書の内容は終了。

偉そうなことを当時は書いたものの、本記事で私がみなさんに送ったアドバイスを今の自分が完璧に実行できているわけではありません笑

人生なんて結局は、後から振り返ってみて 「あぁ、あの時この道を選んでよかったな or 間違ってたな」と気づくものです。

なので、自分が選んだ場所で思いっきり楽しんで、未来の自分を満足させるのが一番です。

留学希望者のみなさん、必要以上に自分を追い込まず、楽観的な姿勢で立ち向かっていってください。

何か私に手助けできることが ありましたら、気軽にご連絡ください。

海外大学院を目指す方にオススメの書籍・ウェブサイト

大学院留学を志す人にとっての定番書籍は以下の2冊。

私も実際に読んでいましたが、この2冊に何度助けられたことか…!

非常に情報量が豊富であり、必ずや留学の道しるべになってくれるでしょう。

最近では、「研究留学のすゝめ!」という本も出版されており、こちらは主にポスドクとして留学したい方を対象に執筆されているようです。

海外大学院留学用の給与奨学金獲得のコツについては、同じく船井財団奨学生の篠原肇さんのブログに詳しい(ちなみに、篠原さんはコーフボールとドラフツの日本代表選手としても活躍されてます)。

はじめに給付型奨学金事情についてお伝えします。私が経験を通して分かるのは、日本の理工系の大学の修士課程を修了して大学院博士課程に正規で進学する場合です。現在おかれている立場や所属、各課程や財団ごと等、方針や毛色が違うと思いますが、役に立つ部分もあるかと思います。 はじめに 概要 応募について 採用されるには何を...

それでは本日はこのへんで。

記事の内容が気に入っていただけましたら、SNSでシェアして頂けると嬉しいです。